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2005年 04月 11日
企業の筆記試験を終え、腹をすかせた僕は、夜、とある飯屋に立ち寄った。余程、繁盛していないのだろうか、客は誰もいなかった。
「いらっしゃい」 50歳ぐらいの店のおかみがそう言うと、僕は奥の方の席に座った。お品書きを手に取ると、おかみがのそのそと近づいてきたので、僕はおかみの目を見ながら注文をとった。おかみも僕の目を見ていた。僕が注文をとったにもかかわらず、おかみは僕をじっと凝視するものだから、「一体なんだってんだ」と内心で思いつつ、目を逸らさずに僕もおかみを見ていた。すると、おかみがふっと笑い、こう言った。 「アンタ、顔白いねぇぇ。はっは。元気なさそうな。」 僕は、途轍もない不快感を感じ、おかみに暴言を吐いて、店を飛び出したい衝動に駆られたが、ぐっとこらえた。そう、今の一言が他人が僕を見ての第一印象なのだ。企業の面接官も、僕と対面した時、口には出さねど上と同じような言葉を心中で吐いたに違いないのだ。僕は、そういうことを考えながら飯が来るのを待っていると、飯を持ってきたおかみが更にこう言った。 「なんか、イヤイヤ食べるって感じやねぇ、ニイチャン」 「....いや、違いますよ」 僕はおかみに対して、激しい憤りを感じ、かなり低い声でそう返事をした。だが、このおかみの心のない発言のおかげで、自分を客観的に見ることができたという点に関しては、おかみに感謝をした。今のままだといけないことは確かである。明日、日焼けサロンに行き、体を焼く決心をした。そこまで、皆が白い白いというならば、黒くなりましょう。僕の肌はどれくらい白いかというと、まず、色白の女性を想像して頂きたい。その女性の腕に着目し、更にその腕の裏側の部分を想像してください。それが僕の全身の色である。明日からジムに行き、水泳をすることにした。僕は健康的で頑強な肉体という嘘の鎧を纏うのだ。
by f_ranker
| 2005-04-11 20:55
| 就職
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